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2000年問題(Y2K) ── 西暦下2桁が招いた世界規模の改修

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2000年問題(Y2K) とは、西暦の年を下2桁だけで記録・計算していたコンピュータが、2000年の「00」を1900年と取り違え、計算・比較・並べ替えを誤るおそれがあった問題である。米国会計検査院(GAO)は1997年の手引きで、何十年ものあいだ年を「97」のように2桁で表してきたのは、記憶装置を節約し運用コストを下げるためだったと説明している。2桁のままでは2000年と1900年、2001年と1901年が区別できない。
各国は1990年代後半に巨額の費用をかけて改修した。米上院の2000年問題特別委員会によれば、米国が費やしたのは推計約1,000億ドル。そして2000年1月1日、各地で小さな不具合は出たが、委員会の言葉では米国でも世界でも大きな問題は起きなかった。それが「改修が効いた」からなのか「もともと騒ぎすぎだった」からなのかは、いまも評価が分かれている。
何が問題だったのか
GAO によれば、日付を使って計算・比較・並べ替えをするプログラムは、1999年より後の年を扱うと誤った結果を出しうる。たとえば2000年生まれと1900年生まれを区別できなければ、年齢、利息、有効期限、支払期日の計算が狂う。
問題は2桁の年だけではなかった。1900年はうるう年ではないが、2000年はうるう年である。2000年を1900年と誤認すれば、2月29日が存在しない日として扱われる。GAO が「2000年対応」の定義にうるう年の計算まで含めたのはそのためである。
直す側の困難も GAO が書いている。政府のシステムの多くは20〜25年前に設計され、文書が乏しく、古い、あるいは廃れた多様な言語で書かれていた。1つのシステムが数十から数百のプログラムからなり、それぞれが数千から数百万行あり、そのすべてを日付の扱いについて調べなければならなかった。読み出し専用メモリに焼き込まれたソフトウェアや、OS、通信、データベースまでが対象になった。
米国の対応
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 1997年2月 | GAO が2000年問題を連邦政府の「高リスク分野」に指定 |
| 1997年5月 | 行政管理予算局(OMB)の最初の報告。主要24省庁のミッションクリティカルなシステムのうち対応済みは21% |
| 1998年2月4日 | クリントン大統領が大統領令13073号に署名し、2000年問題対策会議を設置。議長は John Koskinen |
| 1998年4月 | 上院に2000年問題特別委員会が発足 |
| 1998年10月 | 緊急補正予算として33億5,000万ドル(国防総省11億ドル、その他22億5,000万ドル) |
| 1999年12月 | OMB が対象システムの99.9%が対応済みと報告 |
| 2000年2月29日 | 上院特別委員会が最終報告を出して解散 |
大統領令13073号は冒頭で、多くの電子システムが「00」を2000年ではなく1900年と解釈してしまう設計上の特徴を持つと述べ、放置すれば誤った計算をするか、まったく動かなくなるとした。
費用はいくらだったのか
正確な総額は誰にも分からない。上院特別委員会の最終報告自身が、世界全体の準備費用は永遠に分からないかもしれないと書き、そのうえで複数の推計を並べている。
| 推計した者 | 対象 | 金額 |
|---|---|---|
| 行政管理予算局(OMB) | 米連邦政府 | 83億4,000万ドル |
| 米商務省 | 米国の政府と企業 | 約1,000億ドル |
| Gartner Group | 米国 | 1,500億〜2,250億ドル |
| IDC(Project Magellan) | 世界(うち米国1,340億ドル) | 3,200億ドル |
| Newsweek の記者 | 世界 | 5,000億ドル |
当時よく使われた見積もり方は、点検・改修・試験するコード1行あたり1ドルという目安だった、と委員会は記している。
2000年1月1日に起きたこと
上院特別委員会の最終報告は「Y2K Aftermath — Crisis Averted」(危機は回避された)と題されている。報告が挙げた国内の例は、メディケアの支払い遅延、一部のクレジットカード会社の二重請求、偵察衛星システムの機能低下、いくつかの地域の911(緊急通報)の障害、核兵器工場のシステムの異常。国外では原子力発電所の安全に関わらない部分の不具合、香港先物取引所の停止、医療機器の不具合などである。それでも報告は、米国でも世界でも大きな問題は起きなかったと結論した。
組み込みチップについては、1998年末から1999年初めには2〜3%の故障率が予測されていたが、1999年第4四半期の試験の分析では0.001%と見積もられた。
日本の対応
政府は1998年9月、高度情報通信社会推進本部で「コンピュータ西暦2000年問題に関する行動計画」を決定した。1999年4月の顧問会議の取りまとめでは、中央省庁や特殊法人が持つ優先度の高いシステムのうち、やむを得ない事情があるものを除く92%が1999年6月までに模擬テストを終える予定とされた。
平成12年版の通信白書によれば、年末年始には官邸対策室を頂点とする情報連絡網を整え、総理大臣官邸のホームページなどで国内外の状況を発信した。郵政省所管の分野では、1月1日に通信関係で3件、放送関係で1件、郵便関係で1件の不具合が起きたが、いずれも速やかに復旧した。うるう日の2月29日には、郵便貯金の ATM の一部、約1,200台が内蔵チップの不具合で起動せず、当日の午後に復旧している。
上院特別委員会の付録にも日本の事例が並ぶ。志賀原子力発電所の気象監視システム、東京証券取引所のバックオフィス、銀行や信用組合の通帳・ATM の日付表示などである。ただし委員会は、これらを直接検証できたわけではなく、信頼できると判断した情報源の報告を載せたと断っている。
「騒ぎすぎ」だったのか
評価は2つに分かれる。
上院特別委員会は、1998年から1999年初めの証言と研究から脅威は現実のものだったと確信しており、取り組みの規模は正当で、支出は必要だったというのが委員会の判断だと書いた。GAO も2000年9月の報告で、連邦政府の指導力と調整を成功の主な理由に挙げている。
反対側の代表は、オーストラリアの経済学者 John Quiggin が2004年に書いた論文である。Quiggin は、ほとんど改修しなかった所でも問題が小さかったことを挙げ、2000年対応のために使われた費用の大半は無駄だったと論じた。1999年初めの時点で、壊れてから直す方針(fix on failure)を選べたはずだという主張である。
どちらの見方も推論を含む。改修しなかった世界を観測することはできないからだ。確かなのは、何千億ドルもの費用と、目立った障害の少なさの両方が記録に残ったということである。
その後に残したもの
上院特別委員会は、2000年問題が古いシステムの近代化を促し、国の技術基盤が互いにどう依存しているかを明らかにしたと書いた。同じ報告は、次の日付問題として2038年に一部の UNIX のタイマーが桁あふれを起こす可能性にも触れている。2桁の年を残したまま「ピボット年」で解釈する応急処置をした所では、いずれ同じ種類の問題が出うるとも警告した。
この時代のソフトウェアの背景は プログラミング言語の年表 に、同じ年の出来事は 年表の概観 にある。2000年3月には、米国の株式市場で ドットコム・バブル が頂点を迎える。
よくある質問
- 2000年問題(Y2K)とは何だったのですか。
- 西暦の年を下2桁だけで記録していたコンピュータが、2000年の「00」を1900年と取り違え、日付の計算・比較・並べ替えを誤るおそれがあった問題です。米国会計検査院(GAO)は、2桁にしたのは記憶装置を節約し運用コストを下げるためだったと説明しています。2000年はうるう年なので、2月29日も危険日とされました。
- 2000年問題の対策にはいくらかかったのですか。
- 正確な総額は分かっていません。米上院の特別委員会は、米連邦政府で83億4,000万ドル(OMB)、米国の政府と企業で約1,000億ドル(商務省)、世界で3,200億ドル(IDC)や5,000億ドル(Newsweek の記者)といった推計を並べています。
- 2000年1月1日には実際に何が起きたのですか。
- 各地で小さな不具合が出ました。米上院特別委員会の報告は、メディケアの支払い遅延、クレジットカードの二重請求、偵察衛星システムの機能低下、香港先物取引所の停止などを挙げたうえで、米国でも世界でも大きな問題は起きなかったと結論しています。日本では郵政省所管の分野で1月1日に5件の不具合があり、いずれも速やかに復旧しました。
- 2000年問題は騒ぎすぎだったのですか。
- 評価は分かれています。米上院特別委員会は、脅威は現実のもので取り組みの規模は正当だったと判断しました。一方、経済学者 John Quiggin は2004年の論文で、改修の少なかった所でも問題は小さかったとして、費用の大半は無駄だったと論じています。改修しなかった場合の世界は観測できないため、どちらも推論を含みます。
出典
2桁の年を使った理由(記憶装置の節約と運用コスト)、2000年と1900年の区別、古いシステムと多様な言語、うるう年を含む2000年対応の定義
米国の推計約1,000億ドルと各種推計、補正予算33億5,000万ドル、1月1日の国内外の事例、組み込みチップの故障率、委員会の判断、日本の事例一覧、2038年問題
1997年の高リスク指定、OMB の21%から99.9%への推移、補正予算の内訳、成功の要因
一次資料平成11年版 通信白書 コンピュータ西暦2000年問題への対応 — 郵政省(総務省)
1998年9月の行動計画、1999年4月の顧問会議での取りまとめ(模擬テスト完了92%の見込み)
一次資料平成12年版 通信白書 コンピュータ西暦2000年問題への対応 — 郵政省(総務省)
官邸対策室、1月1日の通信・放送・郵便の不具合5件、うるう日の郵便貯金 ATM 約1,200台
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