T1#japan#standard#consumer
QRコード ── デンソーウェーブの2次元コードと、権利を行使しない特許

メタデータ
- 日付
- 年代
- 1990s
- Tier
- T1
- 参照年表
- 携帯電話・スマートフォンの歴史
- 出典数
- 11
- 関連項目
- 00
- Tags
- #japan#standard#consumer
QRコード は、1994年に デンソーウェーブ(当時は現在の株式会社デンソーの一事業部)が発表した2次元コードである。名前の QR は「クイック・レスポンス」の略で、高速な読み取りにこだわった開発の考え方を表している。開発を担当したのは 原昌宏 だった。
QR コードが工場の部品管理から、携帯電話、店頭の支払い、感染症対策の来店記録にまで広がった理由のひとつは、デンソーウェーブが特許を持ちながら、規格どおりの QR コードについては権利を行使しないと決めたことにある。同社は、これは開発当初から決めていたことだと説明している。
バーコードの限界から
デンソーウェーブの説明によれば、出発点はバーコードだった。日本の高度成長期にスーパーマーケットが広がり、レジで価格を手で打ち込む負担を減らすためにバーコードと POS システムが普及した。だがバーコードの容量は英数字で最大20字程度しかない。バーコードの読み取り機を開発していたデンソーウェーブには、「コード自体にもっと多くの情報を持たせたい」「漢字やカナも表現したい」という要望が寄せられていた。
原は「当時他社が開発していた2次元コードは、情報をたくさん入れることにとらわれていた」と振り返る。原は、多くの情報を持てるうえに読み取りやすいコードを目指し、たった2人のチームで開発を始めた。
1:1:3:1:1 ── 位置検出の模様
最大の課題は、どうすれば速く読み取れるかだった。原が思いついたのは、「ここにコードがある」という位置の情報をコードに付けることである。それが、QR コードの三つの隅にある正方形の 切り出しシンボル(位置検出パターン)になった。
なぜ正方形なのかについて、原は「それは、帳票などで一番出現率が少ない図形だったからですよ」と語っている。近くに似た印があれば、読み取り機はそれをコードと取り違える。開発チームはチラシや雑誌、段ボールなどに印刷された絵や文字を白黒に直して面積の比率を調べ続け、印刷物の中で一番使われていない比率 1:1:3:1:1 を突き止めた。走査線が360度どの方向から通っても、この比率を探せばコードの位置と向きが割り出せる。
| 項目 | デンソーウェーブの説明 |
|---|---|
| 開発期間 | プロジェクト開始から1年半 |
| 容量 | 数字で約7,000文字。漢字も表現できる |
| 読み取り速度 | 他のコードより10倍以上速い |
| 名前 | QR = quick response |
権利を行使しない特許
デンソーウェーブは QR コードに関して多数の特許を持っている。そのうえで同社は、規格化された QR コードについては権利を行使しないと明言した。特許についての同社のページは「JIS/ISOの規格に準拠したQRコードは誰でもご自由にお使いいただけます。」と書いている。規格から外れた QR コードを使う場合は、特許権の確認を求めている。
同社の FAQ によれば、商用で使う場合も使用料はかからず、ライセンス契約も要らない。「QR Code」という語は同社の登録商標だが、商標が及ぶのはその語だけで、QR コードの模様(画像)には及ばない。
デンソーウェーブはこの方針を、より多くの人に QR コードを使ってもらいたいという開発者の気持ちの表れだとし、コストがかからず安心して使えることで QR コードが「公共のコード」として世界中で使われるようになったと書いている。2012年に QR コードがグッドデザイン賞を受けたときの評価にも、開発の早い段階から技術を公開した先見性が挙げられている。
規格になる
| 年 | 出来事(デンソーウェーブの説明から) |
|---|---|
| 1994年 | QR コードを発表 |
| 1997年 | 自動認識業界の AIM 規格に |
| 1999年 | JIS(日本産業規格)の2次元コードの規格に。日本自動車工業会の EDI 標準帳票にも採用 |
| 2000年 | ISO の国際規格に |
| 2004年 | より小さいマイクロ QR コードが JIS に |
| 2008年 | 長方形にもできる iQR コードを発表 |
| 2014年 | 絵や写真と組み合わせられる FrameQR を発表 |
最初に使ったのは産業界だった。自動車業界が生産から出荷、伝票の発行までを管理する電子かんばんに採用し、食品・医薬品・コンタクトレンズの業界も商品の管理に使った。BSE 問題の後、食品の生産と流通の過程を透明にするよう求める声が高まったことも、大量の情報を持てる QR コードの追い風になった。
2014年6月17日、QR コードの開発チームは欧州特許庁の欧州発明家賞で、インターネットの一般投票で選ばれる Popular Prize を受けた。デンソーによれば日本からの初の受賞で、チームはデンソーウェーブの原昌宏、渡部元秋、野尻忠雄と、豊田中央研究所の長屋隆之、内山祐司の5人だった。
携帯電話で一般の人へ
デンソーウェーブによれば、QR コードが日本で広く一般の人に広まったのは 2002年 で、きっかけは QR コードの読み取り機能を持つ携帯電話の発売だった。読み取るだけで携帯サイトにアクセスしたり、クーポンを受け取ったりできる便利さが受けた。当時の日本の携帯電話には、i モード のように端末からネットに接続する仕組みがすでに根付いていた。いまでは名刺、電子チケット、空港の発券システムなどにも使われている。
支払いの道具に
QR コードは、のちに店頭の支払いの手段にもなった。
中国 ── CGAP は2019年9月の報告で、Alipay と WeChat Pay が中国のモバイル決済を作り変えた成長の多くは QR コードの上に成り立ったとし、2016年までに1.65兆ドルを超える取引がコードを使ったと書いている。CGAP は、QR コードが利用者にも店にも安く導入しやすかったことを利点に挙げ、両社は NFC なども試したうえで QR を選んだとしている。
日本 ── PayPay は2018年10月5日にサービスを始めた。5周年を伝えた Impress Watch の記事(2023年10月5日)によれば、登録ユーザーは5年で6,000万人を超え、PayPay は2022年に国内のコード決済で金額・回数ともに約67%のシェアを占めたとしている。キャッシュレス推進協議会の「キャッシュレス・ロードマップ2024」を伝えた Impress Watch(2024年12月26日)によれば、2023年の日本のキャッシュレス決済比率は39.3%で、金額ベースの内訳はクレジットカード83.5%、コード決済8.6%だった。前年比の伸びはコード決済が37.5%と最も大きい。
コロナ禍の来店記録
新型コロナウイルスの流行は、QR コードに別の役割を与えた。英国政府は2020年9月24日、イングランドとウェールズで NHS COVID-19 アプリの提供を始めたと発表した。アプリには、店や施設に掲示された公式の QR コードを読み取って来店を記録する機能があり、その施設にいた人が後に陽性になれば通知を受けられた。この日からイングランドの一部の事業者は、公式の NHS QR コードのポスターを掲示することが法律で義務づけられた。発表の時点で、16万を超える事業者がすでに QR コードを取得していた。
その後
原は、白黒のコードはいまでは見慣れた存在になったとして、もっと華やかで刺激を与える QR コードを作りたいと語っている。携帯電話の歴史の中での位置づけは 携帯電話・スマートフォンの年表 にある。
「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標である。
よくある質問
- QRコードは誰が、いつ作ったのですか。
- 1994年に、当時デンソーの一事業部だったデンソーウェーブが発表しました。開発を担当したのは原昌宏で、デンソーウェーブによれば、最初はたった2人のチームで、開発開始から1年半で完成させました。
- QRコードを使うのにお金はかかりますか。
- デンソーウェーブは、JIS や ISO の規格に準拠した QR コードは誰でも自由に使え、商用でも使用料やライセンス契約は不要だとしています。特許は保有していますが、規格化された QR コードについては権利を行使しないと明言しています。「QRコード」という語は同社の登録商標です。
- QR の意味は何ですか。
- クイック・レスポンス(quick response)の略で、高速な読み取りを重視した開発の考え方を表しています。デンソーウェーブは、他のコードより10倍以上速く読めるとしています。
- QRコードが一般に広まったのはいつですか。
- デンソーウェーブによれば、日本で一般の人に広まったのは2002年で、QR コードの読み取り機能を持つ携帯電話が発売されたことがきっかけでした。読み取るだけで携帯サイトにアクセスしたり、クーポンを受け取ったりできるようになりました。
出典
二次資料QRコード開発チームが欧州発明家賞でPopular Prize受賞、日本から初めて — MONOist, 2014年6月18日
開発チーム5人の漢字表記(原昌宏、渡部元秋、野尻忠雄、長屋隆之、内山祐司)
最終更新: