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MySQL 最初のリリース ── LAMP スタックを支えたオープン RDB

出典Oracle Corporation (Wikimedia Commons, vectorised by Vulphere) · Public Domain (text logo, ineligible for copyright); MySQL is a trademark of Oracle · Commons で見る

メタデータ

日付
年代
1990s
Tier
T1
出典数
09
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01
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1995年5月23日、 スウェーデンの Michael「Monty」Widenius が手がけていた小さな RDBMS の最初のバージョンが世に出た。 のちに MySQL と呼ばれることになるこのデータベースは、 2000 年代のインターネット ブームを土台から支え、 「Web 開発の標準 RDB」という言葉の同義語になる。

起源 ── TcX 社の内製ツール

TcX がデータベース プログラムを扱いはじめたのは 1979 年にさかのぼる。 Widenius(1962 年生) は Allan Larsson とともにスウェーデンの TcX DataKonsult AB に関わり、 倉庫管理用に「UNIREG」という ISAM ベースのデータベース ツールを書いた。 1990 年代、 TcX は UNIREG を SQL 対応にする必要に迫られる。

選択肢として既存の mSQL(Hughes Technologies の David Hughes による軽量 SQL エンジン) を検討したが、 MySQL のリファレンス マニュアルは当時の判断をこう記している ── mSQL は「十分に速くも、 十分に柔軟でもなかった」。 そこで Widenius は、 UNIREG の高速なストレージエンジンの上に独自の SQL エンジンを作り、 API だけは mSQL とほぼ同じにした。 mSQL 向けに書かれたサードパーティ コードを、 そのまま移植できるようにするためである。

名称「MySQL」は、 リファレンス マニュアルによれば共同創業者 Monty Widenius の娘 My に由来する(もう一人の娘が Maria、 のちの MariaDB の名前の由来となり、 息子 Max は MaxDB に名を残した)。

1995 年 5 月 23 日 ── 最初のリリース

1995 年 5 月 23 日、 Widenius・David AxmarkAllan Larsson の MySQL AB から MySQL の最初のバージョンが出る。 ただしこれは社内向けで、 世界に届くのは 1996 年 10 月の MySQL 3.11.1 ── Solaris 向けバイナリ配布が最初で、 Linux 2.0 用のバイナリが 11 月、 ソースの公開はその翌月だった。 なおこの時期の版番号については記録が割れており、 バージョン 1.0 を「4 人の限られた相手に配った」のは 1996 年 5 月だったとする同時代の記述もある。

ライセンスは GPL ではなかった。 Widenius 自身が後年書いているとおり、 MySQL AB を立ち上げるために「自由に使えるが、 商用利用または Windows プラットフォームで使う場合は有償」という独自ライセンスを採っていた(UNIX 版の条件は Aladdin Ghostscript のそれに倣ったものである)。 GPL に切り替わるのは 2000 年、 バージョン 3.23 系からで、 理由は「自分たちのライセンスをいちいち説明せずに済ませるため」だったという。 以後、 GPL と商用ライセンスの デュアルライセンス ── 商用ライセンスを買えば GPL の再配布義務が免除される ── が MySQL AB の収益の柱になり、 後の OSS ビジネスモデルの原型の一つとなった。

LAMP スタック ── Web 2.0 の土台

MySQL が爆発的に普及したのは、 LAMP スタック の中核を担ったからである。 Linux(OS)、 Apache(Web サーバ)、 MySQL(DB)、 PHP/Perl/Python(言語) ── すべて無料で揃うこの組合せは、 2000 年代の Web サイト・ブログ・SaaS の標準構成となった。

WordPress(2003 年) は MySQL がデフォルト、 phpBB、 MediaWiki(Wikipedia の中核) も MySQL、 Facebook が初期に使ったのも MySQL、 YouTube、 Twitter、 Booking.com ── 当時の主要 Web サービスの多くが MySQL の上に立っていた。 2008 年の Sun のプレスリリースも、 MySQL の採用例として Facebook・Google・Nokia・Baidu・China Mobile を並べている。 ACID は弱くてもいいから速くて手軽な RDB が欲しい ── そんな Web 開発者の需要に、 MySQL がぴたり嵌った。

その速度の秘密は、 デフォルトの MyISAM ストレージエンジン だった。 トランザクション非対応・行ロックなし(テーブル ロックのみ)・クラッシュ時の整合性保証が弱い ── これらを諦める代わりに、 読み込み中心のワークロードで軽さと速さを稼いだ。 後に InnoDB エンジンが ACID とトランザクションを持ち込み、 2010 年 12 月の MySQL 5.5 で InnoDB がデフォルトに昇格する。

Sun 買収、 そして Oracle 傘下へ

2008 年 1 月 16 日、 Sun Microsystems が MySQL AB を「総額約 10 億ドル」で買収する最終合意 を発表した(クロージングは同年 2 月 26 日)。 当時のオープンソース企業としては最大級の買収額である。 プレスリリースで Jonathan Schwartz CEO はこう述べている。

"Today's acquisition reaffirms Sun's position at the center of the global Web economy. ... MySQL's employees and culture, along with its near ubiquity across the Web, make it an ideal fit with Sun's open approach to network innovation."

同じリリースは MySQL を「LAMP の M」と明記し、 Sun がサーバ・ストレージ・OS・言語・DB を垂直に束ねる構想を語っていた。

しかしその翌年、 Oracle が Sun の買収を発表(2009 年 4 月、 総額 74 億ドル)。 手続きが完了したのは 2010 年 1 月 27 日 で、 MySQL は Oracle Database を擁する Oracle の傘下に入ることになる。 オープンソース コミュニティに衝撃が走ったのは言うまでもない ── 「商用 RDB 最大手が、 最も普及したオープンソース RDB を所有する」という構図が完成したからである。

MariaDB フォーク ── オープンな後継

Oracle による Sun 買収の発表よりも前、 2009 年 2 月 5 日 に Widenius は Sun を離れると自身のブログで宣言した。 理由は Oracle ではなく、 Sun 傘下での開発体制そのものである ── 「MySQL サーバの開発のされ方に満足していない」、 サーバ開発を外部の参加を促す「真にオープンな開発環境」へ移したい、 と彼は書いた。 この時点では既存ツリーからの分岐を「フォークではない」と位置づけていたが、 結果として生まれたのが MariaDB である。 名前はもう一人の娘 Maria に由来する。 新会社 Monty Program Ab から最初のリリース MariaDB 5.1.38 が出たのは 2009 年 10 月 29 日だった。

2013 年 4 月、 Wikimedia Foundation が英語版・ドイツ語版 Wikipedia と Wikidata を MariaDB 5.5 へ移行。 同年 9 月には Google の技術者が XLDB カンファレンスで社内 MySQL 群の MariaDB 10.0 への移行を語り、 Linux ディストリビューションも openSUSE 12.3・Fedora 19(ともに 2013 年)、 Red Hat Enterprise Linux 7(2014 年)、 Debian 9(2017 年) と、 デフォルトを順次 MariaDB に切り替えていった。 Oracle 側の MySQL も開発を続け、 5.7(2015 年) でネイティブ JSON 型を、 続いて X DevAPI による Document Store ── ドキュメント指向の使い方を同じサーバの中で SQL と同居させる仕組み。 MongoDB 互換の API ではなく MySQL 独自のもの ── を導入した。 8.0 は 2018 年 4 月、 8.4 LTS は 2024 年 4 月のリリースである。 二系統が並走する状態が、 現在まで続いている。

1995 年 5 月 23 日が意味するもの

MySQL は、 Codd の関係モデル → Oracle V2 → IBM DB2 という商用 RDB の系譜に、 「無料で、 速くて、 Web のために」という第四の極を加えた事件だった。 SQL の標準性能を犠牲にしてでも「とりあえず動く RDB」を全世界に配ること ── その選択が、 2000 年代以降のインターネットの形を決めた。 Facebook がもし当時の Oracle ライセンス料を払わねばならなかったとしたら、 Web 2.0 はずいぶん違う形をしていただろう。

よくある質問

MySQL が最初にリリースされたのはいつか
1995年5月23日である。 スウェーデンで MySQL AB を興した Michael「Monty」Widenius、 David Axmark、 Allan Larsson が、 最初のバージョンを社内向けに公開した日にあたる。
MySQL という名前はどこから来たのか
リファレンスマニュアルによれば、 共同創業者 Monty Widenius の娘 My に由来する。 もう一人の娘 Maria は MariaDB の、 息子 Max は MaxDB の名前の由来である。
MySQL はいつ Oracle のものになったのか
2008年に Sun Microsystems が約10億ドルで MySQL AB を買収し、 2010年1月に Oracle が Sun の買収を完了したことで Oracle 傘下に入った。 Widenius はその前年、 2009年2月5日に Sun を離れると宣言し、 MariaDB につながる分岐を始めている。

出典

  1. 一次資料1.2.3 History of MySQL — MySQL 8.4 Reference Manual

    取得日: 2026-08-03

  2. 一次資料Michael Widenius, "Time to move on" (Monty says, 5 February 2009)

    取得日: 2026-08-03

  3. 二次資料MySQL Introduction — Linux Journal, 1 October 2000

    取得日: 2026-08-03

  4. 一次資料Wikipedia Adopts MariaDB — Wikimedia Diff, 22 April 2013

    取得日: 2026-08-03

  5. 三次資料MySQL — Wikipedia

    取得日: 2026-08-03

  6. 三次資料MySQL AB — Wikipedia

    取得日: 2026-08-03

  7. 三次資料MariaDB — Wikipedia

    取得日: 2026-08-03

最終更新:

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