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Xbox Series X/S 発売

メタデータ
- 日付
- 年代
- 2020s
- Tier
- T1
- 参照年表
- ゲーム機・ゲーム技術の歴史
- 出典数
- 15
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- 02
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2020年11月10日、 Microsoft は Xbox Series X(499ドル)と Xbox Series S(299ドル)を40市場で同時発売した。 一世代を複数の値段で出すこと自体は新しくない ── Xbox 360 は2005年に Core 299ドル / Premium 399ドル、 PS3 は2006年に20GB 499ドル / 60GB 599ドルで出ている。 Series X/S が違ったのは、 容量や付属品ではなく GPU 規模と想定解像度そのものが別の二機種を、 同時に同一世代として売った点である。 PS5 の発売(米国・日本などで11月12日、 欧州は11月19日)の2日前でもあった。
しかしこの世代の Xbox の物語は、 ハード販売台数で敗れたあとに、 「Xbox という概念」自体を再定義することで続いていく。
二機種戦略と Game Pass
Xbox Series X は AMD Zen 2 / RDNA 2 ベース、 GPU 12 TFLOPS、 内蔵 NVMe SSD 1TB、 4K・最大120fps を掲げた。 GPU の演算性能だけを見れば PS5(10.28 TFLOPS) を上回る ── ただし PS5 は SSD の帯域で上回っており、 「全面的に上」ではない。 一方の Series S は GPU 4 TFLOPS、 内蔵512GB、 1440p ターゲットの全デジタル廉価モデル。 「予算別に入口を二つ用意する」という戦略だった。
両機種を貫いていたのが Game Pass(月額サブスクで数百本が遊び放題)。 ハード本体はサービスへの入口にすぎず、 利益は月額課金から取る ── 定額制そのものは PlayStation Now(2014年) が先行していたが、 自社の新作を初日から全部入れて主戦略に据えたのは Game Pass(2017年開始) が初めてだった。 Quick Resume(複数タイトルを中断状態のまま保持し、 中断地点から再開できる)、 Smart Delivery(所有ゲームの最適版を自動配信)、 4世代分の後方互換、 そして xCloud によるクラウド配信。 ハードに縛られないゲーム体験を目指していた。
Activision Blizzard 買収 ── 687億ドルの賭け
2022年1月18日、 Microsoft は Activision Blizzard を 687億ドル(1株95ドルの全額現金) で買収すると発表した。 テック史上最大級の M&A は、 米 FTC・英 CMA・EU の競争当局による審査を受け、 21ヶ月の係争を経て 2023年10月13日に最終クローズ。 完了時の総額は754億ドルと算定されている。 Call of Duty、 World of Warcraft、 Diablo、 Overwatch、 Candy Crush ── Microsoft は IP 帝国を獲得した。
Phil Spencer(Microsoft Gaming CEO) にとって、 これはハード設置数の劣勢を IP とサブスクリプションで埋める戦略の決定打だった。 だが買収のクロージング直後から、 別の事実が業界に走った ── Microsoft は、 これらの IP を Xbox の独占に縛るつもりがなかった。
2024年のマルチプラットフォーム転換
2024年2月、 Microsoft はファーストパーティ4作を他社機に出すと発表した。 移植先は作品ごとに違う ── Pentiment(2月22日)と Grounded(4月16日)が PS4・PS5・Nintendo Switch、 Hi-Fi Rush(3月19日)と Sea of Thieves(4月30日)が PS5 のみ。 「4本すべてが PS5 と Switch へ」ではない。 ファーストパーティ独占主義からの公式撤退であり、 Spencer はこう述べている ──
"I don't think we should as an industry ever rule out a game going to any other platform."
理由は明白だった。 Sony は2023年12月末時点で PS5 を 5,480万台 出荷したと公表している。 対する Xbox Series X/S は、 Microsoft が2023年半ば以降は台数を一切公表しておらず、 第三者推計で 2,700万台前後。 設置数で2倍近い差をつけられた以上、 IP 収益を最大化するなら他社プラットフォームを無視できない。
結果は割れた。 Sea of Thieves は PS5 で100万本以上を売り上げ、 大手ライブサービスとして第二の春を迎えた。 一方の Hi-Fi Rush は批評的成功にもかかわらず PS5 での販売は限定的(第三者推計で13万本強)に終わり、 開発元 Tango Gameworks は2024年5月に閉鎖された。 同年8月、 Krafton が Tango と Hi-Fi Rush の IP を引き取り、 スタジオは存続する。 続く Indiana Jones and the Great Circle、 Forza Horizon 5、 Doom: The Dark Ages も PS5 リリースが既定路線となった。
「Xbox はハードではない」── 2025年のシフト
2025年10月16日、 Microsoft は決定的な一歩を踏み出した。 ROG Xbox Ally / ROG Xbox Ally X ── ASUS 製のポータブル PC に「Xbox」ブランドを冠した携帯機である。 Ally が599.99ドル、 上位の Ally X が 999.99ドル。 Xbox 自家製ハードではなく、 ASUS の製品に Xbox のソフトウェア層を載せた構成だった。
同じ月、 東京ゲームショウに合わせたファミ通のインタビューで、 Spencer は次世代の本体は Microsoft がファーストパーティとして出すものになると述べつつ、 Xbox という語はコンソール・PC・クラウドを繋ぐソフトウェアプラットフォームへ広がっていくと説明した。 Xbox は箱の名前ではなく、 サブスクリプション・クラウド・OS レイヤーの総称になりつつあった。
2026年 ── 創業世代の退場
そして2026年2月20日、 Satya Nadella が社内メモで Phil Spencer の退任を告知する。 Microsoft 在籍38年、 うち12年をゲーム部門のトップとして過ごした人物の退場だった。
"Over 38 years at Microsoft, including 12 years leading Gaming, Phil helped transform what we do and how we do it." ── Satya Nadella(社内メモ、 2026年2月20日)
後任の Microsoft Gaming CEO には Asha Sharma が就いた。 Instacart の COO、 Meta のプロダクト担当を経て2024年に Microsoft へ移り、 CoreAI のプレジデントを務めていた人物である ── ゲーム畑ではなく AI 畑からの起用だった。 長く後継と目されていた Xbox President の Sarah Bond は退社し、 Matt Booty が Chief Content Officer に昇格した。 背景には数字もある。 2025年12月期のゲーム売上は前年同期比で約10%減と、 会社の見込みより深い落ち込みで、 2026年1月にはゲーム事業の減損計上も発表されていた。
Halo も PlayStation に渡った。 2025年10月24日に PS5 向けが告知された Halo: Campaign Evolved(初代 Halo キャンペーンの Unreal Engine 5 による全面リメイク) は、 2026年7月28日に PS5・Xbox Series X|S・PC で同時発売。 25年間 Xbox の代名詞だったシリーズが、 初めて PlayStation で動いた。
第9世代を振り返って
Microsoft は Series X/S の販売台数を一度も正式に公表していない。 出回っている「累計3,000万台強」といった数字はすべて第三者推計である。 対して Sony は公式に、 2026年3月末時点で PS5 を 9,370万台 出荷したと報告している。 単純なハード戦争という指標では、 Microsoft は敗北した。
サービス側も無傷ではなかった。 Game Pass の加入者数として Microsoft が最後に公表したのは 2024年2月の3,400万人(Sarah Bond、 公式ポッドキャスト) で、 以後の更新はない。 2025年10月1日に Ultimate を50%値上げして月額29.99ドルにしたところ解約が続き、 Wall Street Journal は2026年に約3,000万人へ減ったと報じた。 新 CEO の Sharma は 2026年4月21日、 Ultimate を22.99ドル、 PC Game Pass を13.99ドルへ引き下げると同時に、 新作 Call of Duty の初日提供をやめ、 翌年のホリデーシーズンに回すと発表している。
それでも Activision Blizzard の IP と、 自社 IP を競合プラットフォームに出す路線は売上を支え続けている ── ハード負け × ソフトウェア&サービスで持ちこたえる、 という不均衡な勝敗表が成立しつつある。
Xbox が示したのは、 家庭用ゲーム機を 「箱を売って成り立つ事業」から「サービスを売る事業」へと脱皮させる試みだった。 その試みが完全に成功したとは言えないが、 業界の他のプレイヤー(Sony 自身を含む)がその方向に流されているのも事実である。 第9世代で Xbox が失ったのはハード設置数で、 得たのは「家庭用機ビジネスのルールを書き換える権利」だったかもしれない。
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