2025年1月20–23日T1

Trump 政権の AI 政策転換 ── Biden 大統領令撤回と Stargate 5000億ドル計画

1月20日、第二期 Trump 政権が発足、初日のうちに Biden の AI 大統領令(EO 14110)を撤回。AI 開発の自由化と「米国優位」を掲げる路線へ転換した。翌21日、ホワイトハウスで OpenAI・Oracle・SoftBank が共同設立する AI インフラ合弁「Stargate Project」が発表され、4年で最大5000億ドルをデータセンター・電力・チップに投資する計画が公表された。23日には「AI のリーダーシップ」を主題とした新大統領令が署名され、規制緩和と国家戦略としての AI 推進が公式化。米中対立の構図の中で、AI を国家インフラとして位置づける流れが鮮明化した。

メタデータ

日付
2025年1月20–23日
年代
2020s
Tier
T1
出典数
03
関連項目
01

Trump 政権の AI 政策転換 ── Biden 大統領令撤回と Stargate 5000億ドル計画

2025年1月20日、第二期 Donald Trump 政権が発足した。 就任初日のうちに、 米国の AI 政策は急展開した。

その後の三日間で、 Biden 政権が築いた AI 規制枠組みは撤回され、 史上最大規模の AI インフラ投資計画が発表され、 「米国の AI 優位」を国家戦略として位置づける新大統領令が署名された。

1月20日 ── Biden 大統領令 EO 14110 撤回

就任式直後にホワイトハウスで署名された「初期撤回令(Initial Rescissions of Harmful Executive Orders and Actions)」は、 Biden 政権の数十の大統領令を一括撤回するもので、 その中に Executive Order 14110(2023年10月の「安全で信頼できる AI」大統領令)が含まれていた。

撤回された主要な施策:

  • 大型 AI モデルの政府報告義務(計算量10²⁶ FLOPs 以上)
  • NIST 主導の安全性ガイドライン策定の指示
  • 連邦各省庁の AI リスクアセスメント義務

「規制が AI 開発を遅らせ、 米国の競争力を損なう」というのが公式の理由だった。 業界主要企業の対応は分かれた。 ── 大手は表向きは歓迎、 安全派の研究者と一部の規制支持派からは強い批判。

1月21日 ── Stargate Project

翌21日、 ホワイトハウスで Trump 大統領、 Sam Altman(OpenAI)、 Larry Ellison(Oracle 共同創業者)、 Masayoshi Son(SoftBank)が並んで立ち、 「Stargate Project」を発表した。

計画の骨子:

  • 共同出資: OpenAI、 Oracle、 SoftBank、 そして UAE のテクノロジー投資会社 MGX
  • 規模: 即座に1000億ドル、 4年間で最大 5000億ドル
  • 目的: 米国内に AI 専用データセンター、 電力インフラ、 半導体製造ラインを建設
  • 最初の拠点: テキサス州 Abilene に建設中の Stargate サイト(10ヶ所以上に拡張予定)
  • 雇用: 米国内で「数十万」の雇用を創出すると主張

5000億ドルという数字は、 単一の民間 AI インフラ投資としては史上最大。 比較すると、 米国の年間軍事予算(約8000億ドル)の半分超、 アポロ計画の総額(インフレ調整後で約2500億ドル)の倍。

技術コミュニティの反応は両極化した。 ── 「米国が中国に対抗するために本気で取り組む証拠」「あるいは、 規模競争でしか優位を保てなくなった証拠」「投資が実際に5000億ドル動くかは別問題」(Elon Musk は SoftBank に5000億ドルの保有がないと公然と疑問を呈した)。

1月23日 ── 新大統領令「米国の AI リーダーシップ」

23日、 Trump は「米国の AI リーダーシップ阻害要因の排除(Removing Barriers to American Leadership in Artificial Intelligence)」と題する新大統領令に署名した。

内容:

  1. 「米国の AI が世界のゴールドスタンダードであり続けること」を国家政策とする
  2. Biden EO 14110 およびその下で作成されたガイドラインを180日以内に見直し、 米国優位を阻害するものを撤廃
  3. 各省庁に対し、 規制緩和と AI 普及推進を指示
  4. 大統領補佐官(Science and Technology Policy)に「AI Action Plan」の策定を指示(180日以内)

これにより、 米国の AI 政策の主軸が 「安全性中心」から「優位性中心」 へと公式に転換した。

5日後 ── DeepSeek ショック

Stargate 発表の4日後、 1月27日に DeepSeek-R1 が市場に衝撃を与え、 NVIDIA 株が一日で5890億ドル消失した(deepseek-r1-2025)。

「米国が5000億ドルを賭けると宣言した4日後に、 中国が560万ドルで同等モデルを公開した」── この対比は、 Stargate の規模戦略への疑念を生んだ。 議会では「巨額のインフラ投資が本当に必要なのか」「規制撤廃で米国が優位を取り戻すという前提は正しいのか」という議論が起こった。

それでも Stargate は走り続けている。 2025年4月までに Abilene サイトの第一フェーズが稼働開始、 翌5月にはオハイオ、 オクラホマ、 オレゴンへの拡張が公表された。

規制から開発へ ── 米国の AI ドクトリン

Trump 政権の AI 政策は、 一連の文書と発表によって明確な方向性を示した:

  • 国内 AI 開発の 規制緩和
  • 国家戦略インフラとしての AI への巨額投資
  • 対中 半導体・モデル輸出規制の継続強化
  • 軍事・国家安全保障領域での AI 利用の加速

これは、 EU AI Act が代表する欧州型の「リスク階層・規範重視」アプローチとは明確に異なる、 「開発・優位性重視」のドクトリンだった。 米欧の AI 規制パラダイム分岐は、 2025年初頭から本格化することになる。

中国・米国・EU の三極が、 異なる規範のもとで AI 開発を進める時代 ── 2020年代後半の AI 史は、 その三極の動きを抜きに語れなくなった。

出典

  1. 一次資料Announcing The Stargate Project — OpenAI, Jan 21, 2025

    取得日: 2026-05-24

  2. 二次資料Stargate Project — Wikipedia

    取得日: 2026-05-24