2020年11月12日T1

PlayStation 5 発売

Sony が PlayStation 5 を北米・日本で発売。 AMD Zen 2 ベースの 8 コア CPU、 RDNA 2 GPU、 カスタム SSD(5.5 GB/s)で読み込み時間を劇的に短縮。 触覚フィードバックとアダプティブトリガを備えた DualSense コントローラを採用。 COVID-19 によるサプライチェーン混乱で発売後2年近く慢性的な品薄が続いた。 同時期に発売された Xbox Series X/S と合わせ「第9世代家庭用機」の幕開けとなる。 2024年11月の PS5 Pro 発売(799ドル)まで、 単一世代としては累計約6500万台を販売。

PlayStation 5 本体と DualSense コントローラ
出典Howardcorn33 (Wikimedia Commons) · CC0 1.0 (Public domain) · Commons で見る

メタデータ

日付
2020年11月12日
年代
2020s
Tier
T1
出典数
06
関連項目
00

PlayStation 5 発売 ── COVID と品薄、 そして799ドルの Pro へ

2020年11月12日、 Sony は PlayStation 5 を北米・日本・オーストラリア・韓国・メキシコ・ニュージーランドで発売した。 一週間後の11月19日に欧州・中東・南米・アフリカへと展開。 標準モデル499ドル、 ディスクドライブ非搭載のデジタル版399ドル。

ところがこの本体は、 発売後ほぼ2年にわたって 店頭から消えた。 COVID-19 によるサプライチェーン崩壊、 半導体不足、 そして組織化された転売 ── PS5 は、 第9世代を象徴すると同時に「買えない家庭用機」の象徴にもなった。

ハードウェアという飛躍

PS5 は、 PS4 時代との断絶を意識した設計だった。 AMD Zen 2 ベースの8コア CPU、 RDNA 2 アーキテクチャの GPU(10.28 TFLOPS)、 そして本機の核となる カスタム NVMe SSD(5.5 GB/s)。 PS4 で当たり前だった「30秒以上のロード画面」を、 この SSD は数秒に圧縮した。

DualSense コントローラもまた断絶だった。 触覚フィードバック(HD haptics)はゲームの地形・素材・天候を指先に伝え、 アダプティブトリガは弓を引く張力、 銃のジャム、 ブレーキの感触を物理的な抵抗として再現する。 Astro's Playroom(プリインストール)が、 このトリガと触覚を体験させるための実質的なテックデモとして機能した。

品薄の2年

発売直後から PS5 は深刻な品薄に陥った。 原因は重層的だった ── COVID-19 によるアジアの工場停止、 物流コンテナの逼迫、 PS5 が依存する TSMC 7nm プロセスの世界的需要逼迫、 そしてボット転売による組織的買い占め。

eBay や Mercari では定価の2〜3倍で取引され、 抽選販売・店頭並びが恒常化した。 「PS5 を買う」こと自体が、 2021年から2022年前半にかけてのインターネット文化的事件となった。 状況がようやく落ち着いたのは2022年後半、 発売から約2年が経過してからだった。

Slim と Pro ── 中間世代戦略

PS5 Slim(2023年11月)。 本体体積を30%以上削減、 内蔵 SSD を1TB に増量、 ディスクドライブを取り外し可能なモジュールにした。 デジタル版を買った後でディスクドライブを追加購入できる構成は、 これまでの世代になかった柔軟性。

PS5 Pro(2024年11月7日、 699ドル)。 GPU 性能を約45%向上、 機械学習ベースのアップスケーリング PSSR(PlayStation Spectral Super Resolution)、 レイトレーシング性能2倍。 だが業界の反応は技術的賞賛より、 価格への怒りが支配的だった。 ディスクドライブは別売り(80ドル)、 スタンドも別売り(30ドル)。 フルセットで800ドル超。 「中間世代機としては高すぎる」という批判が SNS を席巻し、 欧州での実勢価格は800ユーロ・900ポンドに迫った。 2026年3月にはさらなる値上げが発表され、 PS5 系全体で「価格上昇する家庭用機」の象徴となった。

ファーストパーティ戦略の転換

Sony はかつて、 ファーストパーティ独占タイトルで PlayStation を売る企業だった。 2024年以降、 この戦略が静かに崩れた。

Helldivers 2(2024年2月、 PS5/PC 同時発売)が決定的な事例だった ── 1000万本以上を売り上げる大ヒットを記録し、 そのうちかなりの割合が PC 経由。 「ファーストパーティを PC に出すと PS5 本体販売が落ちる」という長年の社内ドグマが、 実データで覆された。 続いて Horizon Forbidden West、 The Last of Us Part II、 God of War Ragnarök 等が PC に移植された。 PSVR2 もまた、 2025年に PC 接続サポートを追加し、 専用機としての地位を半ば放棄した。

PSVR2 自体は商業的に苦戦した。 2023年2月発売、 当初550ドルという高価格と、 専用キラータイトルの不在が原因だった。 2025年3月には希望小売価格が400ドルに恒久値下げ、 さらにセール時に300〜350ドルに落ち込んだ。 累計販売は推定340万台規模 ── Quest シリーズの数千万台に遠く及ばない。

累計と現在地

2025年12月時点で PS5 系の累計出荷は 約9220万台(VGChartz 推定)。 Sony 公式の2026年5月発表では累計93.7M に達した。 PS4 の最終的な1億1700万台に近づきつつあり、 ハード単体としては成功と評価できる。

ただし、 単年の販売ペースは前年同期比でほぼ半減 ── 2026年に入って需要は明確に減速している。 価格上昇、 ファーストパーティの PC 流出、 Switch 2 の登場 ── 「PS5 を買う唯一の理由」が、 一つずつ削られていく局面に入っている。

PS5 が記録するのは、 ハードウェアの飛躍と同時に、 家庭用ゲーム機ビジネスモデルそのものの変質の始まりでもある。 専用機の優位性が崩れ、 サービスとマルチプラットフォームへと重心が移る ── その移行期の真ん中にこの機種は立っている。

出典

  1. 一次資料PlayStation 5 launches today — PlayStation Blog, Nov 12, 2020

    取得日: 2026-05-24

  2. 二次資料Sony Ships 93.7 Million PS5 Consoles — Push Square, May 2026

    取得日: 2026-05-24

  3. 二次資料PlayStation 5 — Wikipedia

    取得日: 2026-05-24

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